1.高齢者虐待における共依存問題とは

高齢者虐待における共依存問題とは、被虐待者が積極的にSOSをあげようとしない、虐待者の暴力に抗議せず無抵抗になっている、被虐待者が虐待者をかばう、などの特徴によって、援助者のかかわりが難しいケースです。このサイトはこの問題を、「依存症」や「家族システム」の側面から捉え、被虐待者と虐待者の自立に向けた支援に役立てていただくことを目的に作成しました。

高齢者虐待における共依存事例

Aさんは東北圏の地方都市に住む78歳の一人暮らしの女性です。日常生活に支障を来すほどではありませんが、年齢相応の物忘れがあります。ADLは、トイレには辛うじて自力で行くというレベルで、家事をこなすまではいきません。週2、3回ヘルパー(訪問介護員)がAさんの自宅に来て、最低限の掃除や洗濯、料理をしてくれます。Aさんは基本的に年金暮らしですので、経済的に余裕があるとはいえません。 

さて、半年前、東京で働いていた未婚の長男(46歳)が失職し、帰省してきました。1か月ほど地元で勤め先を探しましたが、なかなか見つからず、次第に息子は、朝から酒を飲んで、ギャンブルに没頭するようになりました。もともと息子は、アルコールとギャンブル問題で失職しています。結局、Aさんの通帳から年金や貯金をおろしてパチンコ通いをしています。Aさんにとがめられると息子は、当初はAさんにむかって罵声をあげたり、小突いたりといったレベルでしたが、最近は、罵声も暴力もともにエスカレートしています。 

ヘルパーは、Aさんは息子から経済的・ 身体的虐待を受けていると判断し、ケアマネジャーに相談しました。ケアマネジャーは地域包括支援センターに相談、ケア会議を通じてAさんに成年後見をつけ、息子と分離させることになりましたが、一つ問題です。Aさんが息子をかばうのです。顔の痣も「(自分で)転んで作った」、通帳の引き落としも「(自分で)おろして息子にあげた」といって頑なです。関係者からすれば、今後AさんのADLや認知機能の低下とともに、事態が増悪するのは想像に難くありません。しかし、本人からSOSが出ない限りそれ以上動きたくても動けないという状況です。

これは、高齢者虐待における共依存の1つの例です。援助者にとって対応が難しいケースだといえます。

共依存ケースに共通する特徴

① 被虐待者は虐待者から積極的に逃げようとしない

高齢者虐待における共依存ケースに共通する特徴の1つ目は、被虐待者が虐待者から積極的に逃げようとしない、SOSをあげようとしない点です。「このまま放っておいてほしい」、自分たち二人の世界(関係性)をこのまま維持していたい、というようなメッセージを発しているかのように見える点です。

② 虐待者の暴力が承認されている

2つ目の特徴は、虐待者の暴力が承認されている点です。被虐待者やまわりの人は、身内を非難することに何らかの理由で抵抗を感じており、暴力に抗議せず、無抵抗になっています。このような被虐待者やまわりの人の態度が、虐待行為を許していることにつながっている、という点です。

③ 被虐待者との関係性が、虐待者の自立を妨げている

3つ目の特徴は、被虐待者との関係性があるがゆえに、結果的に虐待者はいつまでも自立した人としての立ち振る舞いができないでいる点です。ここでいう自立とは、自分のことを自分で決めて、その結果を自分で引き受けるということです。

アルコール依存症の息子は、母親に経済的に依存し、母親に暴力を振るうことで、それでも自分を見捨てない母親を見出すことで、精神的にも母親に依存しています。したがって母親が息子を突き放さない限り、息子はいつまでたっても自立することができません。母親は一見息子をかばっているようですが、結果的に息子の自立を、妨げてしまっています。息子は、母親に依存する状況から脱することができません。 

共依存とは、両者が一緒にいることで互いの自立を妨げている状況をいいます。その不都合を当人は気づかない時もあれば、薄々わかっているにもかかわらず相手を希求し合う時もあります。いずれにせよ「病的な関係性」であり、結果的に当人ないし周囲の人に、支障を起こします。

→2. 依存症モデルで捉えた高齢者虐待の共依存