3. 家族システムで捉えた高齢者虐待の共依存

高齢者虐待の共依存についての理解を深めるために、家族システムから考えてみます。

家族システム

家族は最小単位のシステムで、家族としての全体性をもっています。さらに個々のメンバーは、学校や職場といったシステムの中にも位置づけられています。そして、各家族の中にも目に見えない階層や秩序が存在します。

家族システムは、外界の変化に伴い自ら変化し、安定を保っていく自己調整機能をもっています。ここでいう安定とは、必ずしも望ましい安定とは限りません。望ましくない安定もあります。家族は常に変化しつつ、大きな変化は生じないように自動調節しているシステムとえるでしょう。また、家族システムの中においては、一人の家族員の変化はシステム全体や他の家族員に対しても影響を及ぼします。家族とはまさに「生きもの」です。

家族システムで捉えた高齢者虐待の共依存

① 家族というシステムが失調している

高齢者虐待を、被虐待者と虐待者の二者関係の問題として観るのではなく、家族というシステムが失調している、と観ることがコツです。支援の対象は、被虐待者でも虐待者でもなく、家族全体と捉えます。方向性さえ正しく見極められれば、家族システムは自己調整機能をもっているので、良い方向の軌道にのって動き始め、あとは自分でやっていけるはずです。

② 外界とどのように付き合っているか

家族機能を評価する際に留意すべき点です。1つは、対象となる家族が、外界とどのように付き合っているかという視点です。システムの内と外の境界が明確でしっかりしていると同時に、柔軟でもあることが健全な家族システムであるといえます。そこでは、外界からの情報や刺激や干渉がほどほどに入ってきます。入りすぎてシステムが崩壊するようなことはありません。

たとえば周囲の人の意見を何でも取り入れてしまい、混乱して家族内の意思統一が出来なくなってしまう。これは内と外との境界がもろいシステムです。一方で、援助職者がかかわろうとするのをかたくなに拒絶するような家族であれば、内と外との境界が硬いシステムです。 

③ 階層性が壊れていないか

もう1つは、システム内の階層性がほどほどにあるか、という視点です。特に、夫婦間のサブシステムがしっかり連携しているかということです。それがしっかりしていない典型例としては、夫婦の絆が壊れていて、妻と息子との間に夫以上の強い絆ができてしまっているケースです。

家族として親子が同居する中で、階層性や力関係のバランスが壊れてしまうと、システムとして生産的に機能するのが難しくなります。システムの階層性や力関係は、家族内のコミュニケーションパターンを観察すれば見えてきます。 

④ 悪い状態で安定している場合、均衡を維持するのに加担しているものがないか

もう1つは、悪い状態で家族が安定してしまっている場合、その均衡を維持するのに加担しているものがないかという視点です。もしそのような因子があれば介入する必要があります。

システムである家族は、悪い循環であろうとその循環が維持されている限り安定しているので、あえて良い循環に「変化しよう」とはしません。悪い循環であれ、安定していることのメリットが何かを見極めることです。

高齢者への虐待がなぜ続いているのか、そのことで誰にとって何のメリットがあるのかを、見直すことが求められます。

→4. 虐待者と被虐待者の自立に向けた支援